心を寄せるとは

このブログにはまだ書いてなかったが、今年4月に初めて島根県に行った。念願の出雲大社詣り、足立美術館、松江城が目当てだった。

▲庭園で有名な足立美術館

最初、JR東日本「大人の休日倶楽部」の会員向けツアーに同世代の友人Sさんと二人で申し込んだのだが、なんと人数が少なすぎてツアーが催行されないことに。残念すぎる。でもこの機を逃したらもう二度と行かれないかも、と個人旅行のプランを組み直し、往復とも東京発着の夜行列車「サンライズ出雲」に乗って三泊四日(うち車中二泊)、楽しい楽しい女二人旅と相成った。(ちなみに、Sさんも私も飛行機が嫌いなので「飛ぶ」という選択肢はなかった。)

夜行列車って、昔はブルートレインというのがたくさん走っていたはずだが、いつの間にかもうこのサンライズ出雲とサンライズ瀬戸(途中で分かれる)だけになっちゃったらしい。むかーしむかし、父と弟と3人で甲子園に高校野球を見に行ったときのブルートレインは三段ベッドだったかと記憶するが、いまどきはほとんどが個室でプライバシーは問題なし。なにより寝てる間に移動して朝起きたら目的地、というのは非常に効率がいいではないか。ただ、それはちゃんと眠れれば、の話ではある。往路はともかく復路はやっぱり新幹線にすればよかったかしら、と思わないでもないが、夜中、線路の音を聞きながら真っ暗な外の闇をぼーっと眺め、ときおり現れる灯にどんな人が住んでいるんだろう、なんて想像する非日常。それはそれで楽しかった。

で、真ん中で一泊したのは美肌の湯で有名な玉造温泉のお宿。平日だったにも関わらず夜の夕食ビュッフェ会場はかなり賑わっていた。コロナの第7波はまだ始まってなかったが、それでも会場入口にはビニール手袋がおいてあり、まじめな客は皿を満たしに席を立つたび、その手袋をはめていたのを覚えている。

でも覚えているのはこれだけ。この島根旅行、他にいろいろ印象深いことがありすぎて、この宿に関してはお風呂もお部屋もあまり記憶が定かでなく、実は宿名すらあやふやだったのだ。それが今日、一気に思い出した。郵便受けに一枚のハガキ。差出人は玉造温泉・佳翠苑皆美とある。

「この度の豪雨では御地は大丈夫でございましたでしょうか。地理的に詳しい状況が把握できませんので案じております。被害がなければ幸いでございますが、ご不自由な生活が続くかと思われますが、十分お身体をご自愛いただきまして・・・」

▲出雲大社、大国主命といえば因幡の白うさぎ

8月3日の大雨のことか。さすがに手書きではないので、宿帳に書かれた福島の住所にはぜんぶ同じ文面を送っているのだろう。その前から青森や秋田などでも記録的な大雨で被害が出てるから、東北地方の住所にはみんな送っているのかも。それにしても、この心遣いには少なからず感動した。

今回の豪雨、幸い私の住んでいる福島市街では大したことなかったが、ここからそう遠くない会津北部(喜多方など)は甚大な被害が出た。磐越西線は橋が崩落して一部が不通になっている。その数日前に「赤字路線」として線区別の収支が公表された区間だ。いくら利用者が少ないといっても高校生たちの通学の脚であったことは事実で、代行バスが運転開始されるまでは親御さんたちは送迎で大変だったようだ。

少し前まで豪雨・台風被害といえば西日本のイメージではなかったか。記憶に新しいのは「平成30(2018)年西日本豪雨」かと思うが、そう言えばと思ってあらためて調べてみると、4月に旅した島根県でも百戸以上の床上浸水などの被害があったらしい。でも昨今はもう、日本全国どこへ行っても大雨災害からは(もちろん地震からも)逃れられない。実際、翌年の2019年の台風19号では福島県各地で停電断水を伴う大被害が出た。(福島市内でも局所的に浸水ひどかった。そのときの片付けボランティアの記録はこちら▷「何を学ぶか」)

こういう災害が起きたとき、ボランティアに駆けつけるのが無理ならせめてお金か心を寄せるしかない。自然災害大国・日本に住んでいる限り、これまさに「お互い様」である。ハガキ一枚、心を寄せるだけでも受け取る人の気持ちに影響を与えるものなんだなと思った。

もしまた島根に行く機会があったなら、私はきっとこの宿を思い出すだろう。次回は往復新幹線にすると思うけど。

▲お酒もおいしかったことを思いだした

日本地図を眺めよう

福島に住んでいると、時折この県の広さを全くおわかりでない旅行プランを持つ旅人と遭遇する。

海外の人なら仕方ないかとも思うが、日本人では特に若い方々。どうも東北=首都圏、福島県=神奈川県、くらいのイメージらしい。でもね、県内の4大都市、福島・郡山・いわき・会津若松を、新宿・横浜・千葉・さいたまくらいの感覚で考えているとエライ目にあうのだよ。実際には福島県には神奈川県が6つ近く入るのだよ。

距離感がわからない理由のひとつは、いまの若者たちは大きな日本地図を広げて見たことがないから、じゃないかと思っている。彼らにとって地図といえば小さなスマホ画面の中にしかない。それも都合よく拡大縮小できるのだから、離れた場所の面積の大小がピンとこなくても仕方ないのだろう。

地方旅行では距離だけでなく移動手段も問題だ。もちろん、山手線のようなダイヤで電車が走っていないことは皆さんご承知なのだが、福島駅からのローカル線やローカルバス、都市間を結ぶ高速バスの時刻表を見ておどろく人は少なくない(コロナの影響もあって、もともと少なかった便数がこの2年でさらに減っている)。いちおう人口28万人を擁する県庁所在地、福島市でさえこうなのだ。

そもそも市内には実質的に車しかアクセスのない郊外の観光名所や商業施設も多い。おいでおいでと宣伝しておきながら、また高齢者の免許返上を促しておきながらそれってどうなのと個人的には思うが、市にしてもJRにしても福島交通にしても無い袖は振れないということなのだろう。結果、旅行者にとっては運転できるならレンタカーがベストではある。

地図アプリや乗り換え検索アプリも発達した現代、ざっくり「ここに行きたい」と思ったらとりあえず新幹線に乗り、後は現地で調べればいい、という感覚もわかる。実際、福島は「思い立ったら日帰りもできます」的な宣伝もしている。だけど、それは訪問先が新幹線沿い(中通り地方)の1か所の場合だ。

会津、中通り、浜通り。広い福島県には地方ごとに見るものがたくさんあるが、3地方間のヨコの移動にはかなりの時間がかかる。コロナもそろそろ終わり、夏秋の旅行を考えている方も多いだろう。せっかく来たからにはたくさんのものを見てほしい。だから是非、まず大きな日本地図で福島県と東北地方の大きさを認識し、行きたい場所間の距離を調べ、できればレンタカーを予約してご来福くださいませ~。

【写真上】吾妻小富士から眺める一切経山は活火山。どちらの山も観光道路「磐梯吾妻スカイライン」の途中にある浄土平から登れるが、そこまで行くバス便はない。ときどき自転車で登ってる人がいるけど。

【写真下】「道の駅ふくしま」フードコートの「大笹生(おおざそう=この辺の地名)カレー」。福島の飲食店としては珍しくスパイス類が効いている。先月オープンした道の駅は地域の産物満載で大賑わいだが、ここも福島駅からバスで往復するのはかなり厳しい。

はくちょうとかめ

猪苗代湖の観光遊覧船、はくちょう丸とかめ丸。

運営会社がいちど廃業して解体の憂き目にあったのが、クラウドファンディングでよみがえった。

私もわずかながら協力した。

返礼のチケットで初めてはくちょう丸に乗船した。

うーん。。。

平日だったせいもあろうが、あわや貸し切り状態。

内容についていくつか残念なところあり。

これ、せっかく大勢の支援で復活したのだから、2回目の倒産はしてほしくない。

だからといって自分がリピーターになることは難しい。

なんでもそうだ。

一昨年、福島駅前の老舗デパートがとうとう閉店というとき。

みんな残念がって、最後のセールはたくさん売り上げたらしい。

でもその残念がった人たちは、私も含めて、そのデパートで月に何回買いものしていただろう?実はほとんど行っていなかったとしたら、その理由は何だろう?

子どもの頃の思い出のはくちょう丸をなんとか救いたい、と思った人たちは、大人になってから何回はくちょう丸に乗っただろう?ゼロ回だったとしたら、その理由は何だろう?

敢えてもっとひねくれたことを言おう。もしこの遊覧船が目玉の付いた動物を模したものではなく「ただの船」だったら?

名前も「いなわしろ号」みたいなベタな名前だったら?

はたしてあそこまで「助けよう」運動は盛り上がっただろうか。

正直、私はスルーしてたように思う。

世の中、役目を終えて退場すべきものは、ある。

いっときの感傷に突き動かされた「応援」の行動が必ずしも正しくないことだって、たぶんある。

でもやっぱり、はくちょうとかめにはがんばってほしい。彼らが猪苗代湖からいなくなったら寂しいもの。

でもやっぱり、自分はもう乗らないと思うけど。。。

▲仲間に置いていかれたらしいハクチョウ一羽。かわいそうと思うのは人間の勝手で本人は案外せいせいしてるのかも(笑)

光る蛇

眼下を光る蛇が通る。後から後から。
右から左へ。左から右へ。
ときに並んで。ときにすれ違い。
黙々と軌道の上を這いゆく、蛇たち。
光るお腹に人間と空気を乗せて。

川崎の実家に帰る前日に東京駅近くのホテルに泊まった。部屋はシティビューと書いてあったが、むしろトレインビューというのが相応しかろう。山手線、京浜東北線、東海道線、横須賀線、そしていちばん手前が東海道新幹線。いつもお世話になる東北新幹線が20〜30分に1本(注:福島駅に停まる便)なのに対し、こちらはひっきりなし。本当に山手線と大して変わらない。

年の瀬の夕飯時、通勤電車にはそれなりに人は乗っていたが、普段の年ならもっとぎゅう詰めのはずだ。長距離列車に至っては回送かと見間違えるほど空いていた。それから向かいのビルの2階、あそこは確かライブバーじゃなかったか?テーブルにキャンドルのような明かりが灯っているのは見えるが、おそらくほとんど人はいないのだろう。

不要不急の帰省は控えるようにと言われても、父が亡くなってはじめての正月だ。半分ボケた母親を何日も一人にしておくわけにはいかない。普段世話をしてくれている弟に代わり、正月くらいは姉が帰らねばバチが当たる。翌日から遺品整理と大掃除の数日間が始まるのを前に、この一晩だけは自分にご褒美である。

もともと相対的に感染リスクの低いおひとりさまだが、今回は食事も全部ルームサービス。ジムもスパも人数制限だそうで他の客とはほぼ接しない。この業界も大変だと思うが、それでも東京にはまだまだホテルができる。八重洲口の目の前には、ブルガリホテルが入るという巨大ビルが建築中だ。

今年の年末年始は、一人で閉じこもり気味の母を、気分転換も兼ねて逆に福島の温泉へ「疎開」させようかとも考えたのだが、福島市もなかなか感染が拡大している。そもそも頭も脚も弱った母はとても一人で新幹線には乗れない。そう考えると、無理に福島の温泉へ連れて行かずとも、次回帰省したとき一緒に都心のホテルでプチ贅沢もいいのかも、とも思う。リモートだの二地域居住だの地方移住だのが進むと、意外に都心のホテルはこの手のニーズがあるのではないかしらん。

しかし、な。スパの立派なバスタオルで身体を拭き、使用済みタオル入れに放り込むときの罪悪感。お部屋にも一度しか使っていない立派なバスタオルがあったのに。ふわふわタオル地のルームスリッパは、念のため聞いたら案の定使い捨てだそうだ。なんと。これは持って帰ってリユースせねば。バーに行けば、外したマスクを入れるためのこれまた立派なビニールパウチをもらう。置いて帰ればもちろんゴミになるのだろう。・・・などとけち臭いことを言っているようでは、このクラスのホテルに泊まる「資格」はないのかもね。w

実家に帰れば屋根裏をネズミが走り回ってやかましい。干支が終わる前の最後のお祭りか。丑年になったら駆除してやる。あと24時間。締めくくる、などという気には到底なれないけれど。

今年も本ブログにお付き合いいただきありがとうございました。来年が良い年になりますように。

初秋の一日

今回はただの福島生活日記です(もともと生活日記ですがー)。

久しぶりに丸一日まったく仕事しない日曜日。久しぶりに遠出して久しぶりに県外の温泉に行こうかなーと思ったが、案の定寝坊し、ブランチを食べたらもう昼前であった。しかたないので久しぶりに隣町の岳温泉へ。今年オーナーが変わってリニューアルオープンしたという旅館にお風呂をもらいにいった。

福島市民としては市内にある三大温泉(飯坂、土湯、高湯)が自慢ではあるが、二本松市の岳温泉も負けず劣らずオススメである。福島県に来て最初の2年間の住まいは二本松市だったから、当時は休日のたびに日帰り温泉利用でお世話になっていた。東京から遊びに来た友人と一緒に岳温泉で一泊したことも数知れず。宿泊と日帰りを合わせればおそらく私は全館の風呂を制覇している。今回のお宿もリニューアル後だけあって館内は何もかも新しくてきれい。昼時だったせいか内風呂も露天も独り占めで贅沢した。

運転手のいないおひとりさまは湯上りにビールというわけにはいかず、代わりにお茶とスイーツである。目指すカフェは車で数分だが、このところ深刻化している運動不足を少しでも解消すべく、車を停めた無料駐車場から歩くことにする。岳温泉観光協会はウォーキングプログラムを充実させていて、カフェまでの道も数あるウォーキングコースの一部のはず。だけど、まぁまず歩いている人はいない。そして、人が歩かない歩道というのはこうなる。↓ 

この辺の歩きづらさは別として、道はアップダウンもほとんどなく周りは草原が広がり、陽気がよければたいへん気持ち良い。車なら気づかずに通り過ぎてしまうような、小さな発見もたくさんある。蜘蛛の巣にかかり今にも餌食になろうとしている蝶をしげしげ眺めてこれが自然界の掟なのだよね、とか。視覚だけではない。焚火の煙のにおい、牛舎から牛の鳴き声。五感総動員である。【後日追記:どうもこれを書いた直後に岳温泉のウォーキングプログラムは内容変更になったようで、最初文中からリンクしていたウォーキングマップはもはや存在せず、この道もコースから外れたらしい。】

といってもわずか25分でカフェに到着してしまう。テラス席で「秋限定」のアップルなんとかパフェに食らいついているうちに肌寒くなってきた。帰りの道を歩き始めたら雲の間から陽が差してきたが、この時期の陽はつるべ落としとはよく言ったものだ。まだ3時というのにもう「傾きかけ」の趣である。ちょうどひと月前、関東から遊びに来てくれた友人とドライブした頃は、まだ長い午後の暑さに辟易していたというのに。

と、前方でモーター音すると思ったら、先ほどの歩道で草刈りをしている男性がいた。日曜の午後こんな時間に作業とは、地元の有志だろうか。有難いことである。ちなみに、コロナで地方移住を考えている方。自然いっぱいの田舎暮らしを志向するならモーター式草刈り機のマスターは必須である。

帰宅してこれを書いているうち、瞬く間に真っ暗になってしまった。急いで洗濯物を取り込みにベランダに出ると、福島駅近くの我が家周辺でも鈴虫の大合唱である。

季節がまた一回り。・・・私はもう振り落とされそうだ。どうしよう。