
父:ほら、これがワンちゃんだよ。名前はカロだよ。
私:うん、でもパパ、いまカメラこっち向いてるから。
カロ:ちょっとそんなに手ひっぱんないで。え?カメラどっち?
たぶん昭和40年初めごろのひとコマ。
子どもが好きな父であった。母はいちど流産しているので、私は待望の第一子だったはずだ。それから半世紀あまり。孫の顔を見せるという大事な仕事は弟が担ってくれて、私は好き勝手やってきた。間違っても孝行娘ではなかったが、とくべつ親不孝でもなかったと思う。だから、まあいいか。最後にちゃんとありがとうも言えたしね。
87年おつかれさまでした。楽になれてよかったね。もうカロには会ったかしら?ボンやタケやジョンにもよろしく。バイバイ、パパ。だいじょうぶ、私は幸せです。