前回の投稿で、一戸建は物件がなかなか出てこないので、まずはマンションでローカル相場を勉強、と書いたが、実はマンションの供給もびっくりするほど少ない。連日マンションのチラシで郵便受けが満杯になる東京と比べてびっくりしてもナンセンスなのだが、それにしてもこちらに住んで2年、「マンションのチラシ」というものを一度も見たことがない。
私が探しているエリアは、新幹線がとまる福島または郡山(ちなみに今住んでいる二本松はそのちょうど中間)。いずれも人口は30万前後の「中都市」だ。オーセンティックなトルコ料理が食べたいとか、スーパーは成〇石井じゃないとダメとか贅沢を言わない限り、衣食に関してはふつうに東京と(ほぼ)同様の生活ができる。地方暮らし=いわゆるイナカ暮らしを望んでいるならもっと辺鄙なところはいくらでもあるが、大草原の小さな家風の自然に囲まれた生活は、はっきり言っておひとりさまには不可能である(と思う)。それに、年老いた両親が東京にいるとなると、いざというとき新幹線に飛び乗れるほうがやっぱり好ましいのだ。
で、この両駅周辺なら企業もそれなりに集積しているから、マンション市場もそれなりに活発かと思うとガッカリしてしまう。まず、エリア選定のみでネット検索して出てくる中古の売り物件数が一ケタである。それに他の条件を加えて絞り込むと、先々週の段階で福島市内では1件しかヒットしなかった。もちろんネットに載らない物件もあるはずだが、まずは不動産会社にコンタクトしてみないと始まらない。その1件も決して「これは!」と思うものではなかったが、とりあえず内覧を予約した。で、当日行ったら開口一番、「すみません、今朝のお客様がお申し込みされまして…」。これでかえって気が楽になり、いろいろ質問できた。
まず、この地では新築マンションの供給が少ない。バブルの頃は知らないが、今では年に1棟出るか出ないかだそうだ(いま福島で建設中のマンションはゼロ、郡山で2棟)。その理由は簡単で、仕入れができない、つまりまとまった土地が出ないから。さらに郡山と福島を比べると、福島のほうが古くから住んでいる人が多くて、より「閉鎖的」(営業マン談)。いわゆる先祖代々の土地を手放したがらない傾向が強いので、福島のほうがさらに物件数が少ないんだという。利用してない家土地であっても、なかなか他人に貸したがらない・売りたがらないというのは全国のイナカに共通する傾向らしいが、加えて復旧・復興真っ最中のフクシマにはこのところいろんな種類の人々が入ってきているから、なおさら構える地主も多いのかもしれない。
いくら新築は少ないといっても郡山と福島にはそこそこの数の集積があるので、中古なら出るのかというと、これもそうでもない。たしかに郡山あたりでは、震災・原発事故の後、おそらく県外に移住を決断した人たちだろうか、3年目くらいまでは売り物件が多少増えたそうだ。が、それらが一巡した今は、動きが止まっている状態のようである。

ということで、その営業マンにはいちおう希望の条件を伝え、午後からは郡山の新築マンションのモデルルームへ向かった。モデルルームなんて十数年ぶりだ。オプション満載・生活感ゼロの美しい空間にときめいた昔がなつかしい。ここでもいろいろ興味深い話が聞けたが、なにせ現在売り出し中は2棟しかない。調べればすぐ特定できるので、ここで詳細を披露するのは差し控えるが、とにかく今は売り手市場なんだね、ということは確認できた。
売り手市場になっている理由としては、もともと供給が少ないところに加えて、昨年あたりから顕著になってきたトレンドがあるという。原発事故で沿岸部から強制避難させられて仮設住宅などに住んでいた人たちが、帰るのをあきらめて中通り(=ざっくり新幹線沿い)家を建てたり買ったりし始めているのだ。なんともやるせない話だが、たとえば川内村の避難指示がやっと解除されて帰れるようになったとたん、村の人たちが中通りに家を買い始めたという。もっともこれも営業マンの話だから多少誇張はあるにせよ、指示解除になって戻ってみたら「やっぱりここには住めない」と、かえって踏ん切りがついたという人がいても不思議はないと思う。いままだ8町村に継続している避難指示がこの先順次解除されていけば、同様の現象が起こるのかもしれない。
おひとりさまの家さがしはまだまだ続く…かな?
(写真は郡山のタイ・ベトナム料理店、澤上商店。こちらにはいわゆるエスニック料理店が少ないので、機会があるとあまりお腹が空いてなくても食べてしまうw)
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